介護コラム
介護施設の人員配置基準緩和について解説
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厚生労働省は、介護ロボットや見守りセンサーといったICT(情報通信技術)を活用することなどを条件に、看護施設における人員配置基準の緩和をする方向で検討を行っています。
これに伴って、2022年度には実証事業を実施する方針も示しており、同年度中にデータの取りまとめも行われる予定となっています。
果たして介護施設の人員配置基準が緩和された場合、介護の現場では何が起こるのでしょうか。
今回は、この介護施設の人員配置基準緩和について解説します。
人員配置基準とは施設・利用者数ごとに必要なスタッフの人数
人員配置基準緩和について解説する前に、まず人員配置基準について説明します。
人員配置基準とは、介護施設の人員体制に関する制度を指し、質の高いサービスを提供できることを目的として定められているものです。
そのため、事業形態や利用者数によって必ず配置しなければならない職員の人数や割合も異なります。
例えば、特別養護老人ホームやグループホームなどの場合は、利用者3名に対して介護職員または看護職員が1名、訪問介護の場合は利用者2.5名に対して常勤の介護職員が1名といった基準が設けられています。
人員配置基準を満たしていない場合は不正行為となる
人員配置基準は単なる目安ではなく、基準を満たしていない場合は不正行為とみなされます。
不正行為によって、新規受け入れ停止や営業停止、指定取消などの処分が科されます。
これは、人員配置基準を下回ったまま事業を継続することで、法令違反だけではなく介護報酬の不正請求や虚偽報告、虚偽申請が疑われるからです。
仮に介護事業所が指定取消の処分を受けた場合、最低でも5~10年間は介護事業を行うことができません。
人員配置基準緩和の理由
そもそもなぜ介護施設の人員配置基準を緩和する案が出ているのかというと、介護業界の慢性的な人手不足という深刻な現状が背景にあります。
厚生労働省の推計では、2040年度には2019年度よりも約69万人多い約280万人もの介護職員が必要となるとされているのです。
介護業界は既に人手不足であるにも関わらず、将来は現状よりさらに多くの人手が必要になると考えられています。
そこで、ICTなどを活用することで、なんとかして現在よりも少ない人数で介護を担えるようにできないかとなり、人員配置基準が緩和されました。
人員配置基準緩和への懸念
人員配置基準を緩和した場合、単純計算では介護サービスを現状より多くの人が受けられるようになるでしょう。
しかし、例えば特別擁護老人ホーム(特養)の場合、人員配置基準が利用者3人に対し介護または看護職員1名ではあるものの、実状として多くの現場では入居者2名に対して介護または看護職員は1名という基準よりも多めの配置が行われています。
人手不足であるにも関わらず現場でこのような措置がとられているのは、いくら人員配置基準より多い配置でも、そうしなければ必要な支援ができないためです。
ICTの活用などによってこれまで人(介護職員や看護職員)が行っていた作業をロボットが行えるようになったとしても、そのロボットを動かすのは結局のところ人です。
また、現状、ロボットは人と同じ様に利用者の言動などから必要な対応を行うといったこともできません。
つまり、いくらICTを活用したとしても、配置する職員の数を減らしてしまえば結局のところ職員への負担は変わらず、それどころかかえって負担が増えるのではないかという懸念の声も現場からは聞こえています。
さらに、介護の質を維持するためにも、配置基準を緩和することで人手不足に対応するのではなく、介護職員の処遇改善を行うことで人手不足解消へ近づけるべきなのではという指摘もあります。
既に人員配置基準を満たしていない場合も要注意
介護施設の人員配置基準の緩和については、現時点ではまだ検証を行う段階にあり、実際に施行されるかどうかについては不透明な状態です。
仮に緩和が施行されることとなった場合でも、全ての介護施設において一律に緩和を行うことは現実的ではないといった声もあります。
そして、現状、人員配置基準の緩和がされていないにも関わらず、既に人員配置基準を満たしていない職場で働いている、あるいは就職を考えている職場がそのような状況下にある場合、それは明らかな不正行為であり、非常に大きな問題です。
人員配置基準が遵守されているかどうかは、介護の質や現場での働きやすさの目安としてだけではなく、その事業所の本質や存続にも関わることですので、きちんと調べてみることをおすすめします。
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