介護コラム
サービス介助士とは?学べることや資格取得までの流れ、生かせる業界を紹介
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介護に関する資格は、唯一の国家資格である介護福祉士をはじめ、介護の基本ともいえる介護職員初任者研修・実務者研修や国家資格など、民間資格を含めると多数存在します。
数ある民間資格の中でも、「介助」にスポットを当てた資格が「サービス介助士」です。サービス介助の資格を取得すると、単に介助を学べるだけではなく、それに伴うおもてなしの心や障害に関する知識を深められます。
サービス介助士の資格は介護の現場の他、さまざまな接客業でも幅広く評価されており、資格を取得していると介護以外の業界での活躍にも役立つでしょう。
本記事では、サービス介助士の基本情報と資格取得までに学べる内容、資格取得までの流れ、サービス介助士の資格を生かして働ける業界について解説します。
サービス介助士とは?
サービス介助士とは、公益財団法人日本ケアフィット共育機構が実施・発行している民間資格です。この資格では高齢者や障害を持つ方などに必要な介助を、それぞれの人や場所に合ったやり方で実践できる人材を育てることを目的としています。
一人ひとりに合ったケアができることを「ケアをフィットする」と呼んでいることから、サービス介助士は「ケアフィッター」とも呼ばれています。
要介護となることや障害を持つことは他人事と思われてしまいがちですが、さまざまな環境の変化などによって誰にでも起こり得るものです。サービス介助士の資格の勉強では、まずそのような思い込みを取り除きます。
介助に必要な知識や介助・接客の技術に加え、相手の立場になって考え行動できる発想力を持ち、適したケアを実践するスキルを身に付けられる資格です。
※参考:公益財団法人日本ケアフィット共育機構.「サービス介助士」
准サービス介助士との違い
サービス介助士に似た資格として、「准サービス介助士」という資格があります。こちらも公益財団法人日本ケアフィット共育機構が実施する、サービス介助士に準ずる資格です。後述するサービス介助士の資格取得の流れと比較すると難易度が低く、実技講習がないのが特徴です。
准サービス介助士は通信課程のみで学習できる他、在宅試験に合格すれば資格を取得できるため、自宅で全てを完結できるでしょう。取得にかかる費用も、サービス介助士と比べても安く済みます。
また准サービス介助士はサービス介助士よりも難易度が低く、取得までのハードルが低い資格です。将来的にサービス介助士を目指しているのであれば、まず准サービス介助士資格を取得しておくのもおすすめです。サービス介助士資格取得に必要な自宅学習と提出課題が免除され、実技講習からの受講となります。
※参考:公益財団法人日本ケアフィット共育機構.「准サービス介助士とは」
介助と介護の違い
サービス介助士は、サポートが必要な方の介助を行うことを目的とした資格です。「介助」は高齢者のお世話をする「介護」と同じような意味合いと捉えられがちですが、この2つの言葉は異なる意味を持ちます。
介護は、日常生活を送る上で必要な食事や入浴、排泄などをサポートし、介護を必要とする方の自立を目指すために行われます。一方、介助は日常生活のサポートを通し、生活の質向上の支援を指すというものです。
介護でも生活の質向上を支援することはありますが、介助の場合は生活の質が低下した方が求めるサポートを行うことがメインとなります。介助は介護にも含まれる仕事でありながら、より日常生活におけるサポートを行うことに重きをおいている業務といえるでしょう。
サービス介助士の資格取得で学べる内容
サービス介助士の資格を取得するには、所定の講座を受講しなければなりません。資格取得までの期間には、講座を通して以下の内容を学べます。
ホスピタリティの精神
サービス介助士の資格の大きな特徴として挙げられるのが、ホスピタリティの精神について学べることです。介護系の資格は多数ありますが、他の資格では学ぶことができません。
ホスピタリティは、日本語の「おもてなし」に近い意味を持ちます。介助に限らずとも、人と接する接客業やサービス業ではホスピタリティが求められることが多いです。資格取得を通して得たホスピタリティの精神は、他の業種や日常生活でも活かせるでしょう。
サービス介助士の資格取得カリキュラムには、介助する側・される側両方の立場に分かれた実践的な実習が組み込まれており、介助をされる側に立つ実習を通して介助をする際のコミュニケーションを学べます。
ホスピタリティ精神を持ってケアを行えるようになるこで、介助を行う側が「ケアをしてよかった」と感じられ、介助を受ける方との信頼関係を構築しやすくなります。
障害に関する知識を深められる
サービス介助士の資格を取得する中では、障害当事者講師(サービス介助士アドバイザー)との対話を通し、障害に関する知識を深められる学習機会があります。
普段何も支障なく暮らしている健常者にとって、障害がどのような日常生活を送っているのかは、想像しづらいことかもしれません。サービス介助士の資格取得を通じ、実際に当事者が感じている「バリア」について知ることで、障害に関する理解を深められるでしょう。このときに得た知識や体験は、実際の現場での適切な対応力につながっていくはずです。
実践的な介助の技術が身に付く
サービス介助士の資格取得には、実技講習の受講が必要です。この実技講習では一人の人が、介助する側と、介助を受ける側の両方を演習で実践します。介助をされる立場になってみることで、必要とされている介助を臨機応変に判断して実行できるような、より実践的な介助の技術を身に付けられます。
社会構造への意識改革について触れられる
介護を必要としていたり障害を持っていたりする状態は、健常者にとっては「かわいそう」と思われがちです。「かわいそうだからサポートをしよう」と考える方もいるかもしれません。しかしこれは、サービス介助士における障害の捉え方とは異なります。
サービス介助士の考え方では、「体が不自由な高齢者や障害者の方が困るような状態は社会構造が生み出している」と捉えます。実際のところ、大多数を占める健常者に便利な社会ができていることが原因で、少数派である体が不自由な方が利用しづらい思いをしているケースは少なくありません。
つまり、大多数の健常者を優先している社会構造こそが、要介護者や障害者の生活に制約をかけている原因と考えるのです。
そのため、サービス介助士の資格を取得する際は、社会構造によって困る人が出ていることを前提とした接遇や、おもてなしの心を学びます。このような社会構造に対する意識も、サービス介助士の資格取得を通して学べることの一つです。
※参考:公益財団法人日本ケアフィット共育機構.「資格の特徴」
サービス介助士の資格取得までの流れ
それでは、サービス介助士の資格を取得するまでには、どのような流れで学習を進めるのでしょうか。以下では、資格取得を申し込んだ後からの流れをご紹介します。
1.自宅学習
サービス介助士の資格取得のための講座は、専用のテキストを利用する自宅学習が基本です。テキストでは介助の基礎知識やサービス介助士の考え方、高齢者や障害を持つ方への理解ととともに、おもてなしやコミュニケーションなどを一通り学びます。
2.課題提出
自宅学習で学んだ後は、課題を提出します。提出課題はマークシート式で1問1点の100問から構成されており、基準点は60点に設定されています。60点未満だった場合は、課題の再提出が必要です。課題を提出するまでの目標は、サービス介助士資格の申し込みから6カ月以内とされています。
3.実技教習
提出課題の基準点を上回った方、または准サービス介助士の資格を取得済みの方は、実技教習へ進みます。実技教習は、6~7時間相当のオンライン講座と1日の対面講座の組み合わせで受講、もしくは2日の対面講座受講です。
完全オンラインの学習のみでサービス介助士の資格を取得することはできず、最低でも1日は実技教習を受けなければなりません。
オンライン講座では、実技教習の映像を見ながら学習をします。対面で行われる実技教習は、車椅子操作や高齢者の疑似体験など、より実践的な介助を学べる内容です。
4.検定試験
サービス介助士の資格取得のためには、実技教習の修了後に検定試験の受験が必須です。受講期間には期限があり、資格取得の申し込み後12カ月以内に検定試験に合格しなければなりません。
ただし12カ月以内に検定試験を合格できず修了できなかったとしても、やむを得ない理由がある場合は救済措置を受けられます。日本ケアフィット共育機構に受講期間延長の手続きをすることで、受講期限申し込み後最大3年の延長が可能です。
※参考:公益財団法人日本ケアフィット共育機構.「サービス介助士資格取得までの流れ」
サービス介助士の検定試験の概要
サービス介助士の仕事内容や学べる内容、資格取得までの流れは、ここまで解説した通りです。以下では、サービス介助士の検定試験の概要についてご紹介します。
受験資格
サービス介助士の資格を取得するための受験資格は、特に定められていません。社会人や大学生、専門学校生など幅広い人を対象としています。もちろん、介護の現場で働く介護士などの介護資格取得者も、受験可能です。
検定試験の内容
検定試験は筆記試験のみで、50分の試験時間で実施されます。マークシート式の3択問題で1問2点、全50問の100点満点中70点以上で合格です。もし70点未満で不合格だった場合でも、申し込み後1年以内であれば、有料で再試験を受けられる再試験制度が利用可能です。
検定試験は、自宅学習のテキストや提出課題、実技実習の全24カテゴリーから出題されます。検定試験の合格率は非公開となっているため、正確な難易度は不明です。しかし、およそ8割の受験者が合格しているといわれています。
受験費用と期間
サービス介助士の受験にかかる費用は、4万1,800円(税込)です。この費用には、自宅学習で使用するテキストと提出課題の問題集、実技教習や検定試験など資格取得までの一連の費用が全て含まれています。
また、検定試験に不合格だった場合の再試験受験には、3,300円(税込)の試験料がかかります。前述したようにサービス介助士の資格試験には期限があり、原則的に申し込み後12カ月以内に検定試験に合格しなければなりません。
サービス介助士の資格は、取得後の有効期限が3年間と定められています。有効期限を過ぎた後も資格が必要な場合は、有効期限までに手続きを行うことで更新が可能です。資格の更新には、1,650円(税込)の更新料がかかります。
※参考:公益財団法人日本ケアフィット共育機構.「サービス介助士資格取得までの流れ」
サービス介助士を生かせる業界
サービス介助士の視覚を通して身に付けた、介護を必要とする高齢者の方や障害を持っている方に対する適切な介助のための知識や技術は、介護の現場以外にもさまざまな業界で生かせます。中でも人と接する機会が多い業界では、サービス介助士の資格を持っている人が多数活躍しています。
公益財団法人日本ケアフィット共育機構によれば、約1000社もの多種多様な業界の企業が、サービス介助の学びを導入しているとのことです。数多くの企業で導入されていることからもわかるように、サービス介助士の資格は、介護業界以外の幅広い現場で役立つものといえるでしょう。
交通・インフラ業界
鉄道会社や航空会社、タクシーなどの公共交通機関は、利用するお客さまと接する機会が多いサービス業の一種です。公益財団法人日本ケアフィット共育機構でも、サービス介助士を導入している企業として、多くの交通事業者を紹介しています。
体の不自由な方が公共交通機関を乗り降りするには、介助を必要とすることが多いでしょう。そのようなケースで、サービス介助士は身に付けた技術とおもてなしの心を持って介助ができます。
介助を必要とする方に対して適切な介助を提供することは、公共交通機関そのものへの信頼度を高めることにもつながるため、サービス介助士の知識や技術が役立つというわけです。
また通信会社などのインフラ業界でも、サービス介助士の資格を生かして働けます。例えば携帯電話会社ではお客さまと一対一で対応することが多いものですが、業務上新しい機種やサービス、技術などの説明をする必要があります。
携帯電話に詳しくない高齢者、視覚や聴覚に障害を持つ方などが訪れることもあるでしょう。一人ひとりに適切に対応するには、サービス介助士の資格取得で学んだことが役立つはずです。
旅行・観光業界
ホテルや旅館などの宿泊施設、レジャー施設などの旅行・観光業界も、サービス介助士の資格を役立てられる業界です。各施設においてサービス介助士の資格取得者が高齢者や障害者におもてなしの心を持って介助や対応をすることで、彼らは安心して旅行や観光を楽しめます。
介助が必要な方が適切な介助を受けられれば、施設を利用できるお客さまが増えるでしょう。そのため旅行・観光業界にとってサービス介助の学びの導入は、ターゲット層を広げることにつながります。
小売業
さまざまな物品を販売する小売業において、接客は欠かせないものです。サービス介助士の資格取得で身に付けた、おもてなしの心を持った接遇で買い物サポートを行うと、体の不自由な方も買い物を楽しめます。「またこのお店に来たい」と思ってもらえれば、外出の動機にもなるでしょう。
そのため旅行・観光業界と同様、小売業においても、サービス介助士の知識や技術を生かすことがお客さまの幅を広げることにもつながります。
金融・保険業界
金融・保険業界も少なからず接客を必要とするので、サービス介助士の導入が増えている業界です。
体が不自由な方にとっては、金融機関での手続きにも困難を要することがあります。そこで多くの銀行などの金融機関では、窓口対応や各種手続きといった案内の際にサービス介助士の資格取得者を配置し、スムーズに手続きなどを行ってもらえるようにしています。
親身なサポートによってどのような方にも利便性が高い環境を作ることによって、顧客との信頼関係向上が望めるのが、金融・保険業界でサービス介助士を導入するメリットといえるでしょう。
まとめ
サービス介助士は、介護の仕事に就くために必ず取得しておかなければならない資格ではありません。しかし資格取得のための学習の中では、ホスピタリティの精神や体の不自由な方を取り巻く社会構造への意識改革など、他の介護系の資格では学べないことを広く学べます。
より実践的な介助の技術も習得できるので、取得しておくと介護の現場はもちろん、人と接するさまざまな業界で役立つスキルが身に付きます。そのためサービス介助士は、介護のスキルアップを望む方、幅広い業界で活躍したい方、転職のために知識や技術を身に付けたい方などに適した資格です。
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